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しなやか通信

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2006年 06月 09日

イチローの『変わらなきゃ』

イチローがまだ日本でプレイしていたころ、CMでこんなことを言っていた。

「変わらなきゃ」




自動車メーカーか何かのCMコピーなのだが、この言葉はとても象徴的で、イチローの未来を暗示していたように思う。
野球界の記録を次々と更新していくという意味での『変わらなきゃ』も、もちろんあるのだが、イチローそのものの野球に取り組む姿勢が『変わった』のではないかと思えるのだ。
阪神・淡路大震災の後に、「がんばろう神戸」のかけ声のもと、ファンと一体になって優勝を果たしたオリックス・ブルーウェイブ。若くしてそのチームの中心選手となっていたイチローであったが、傍から見る限りでは、「For The Team」の精神など持ち合わせていないようだった。
関心があるのは自身の打撃技術の向上のみで、その結果、たまたまチームが勝ち進んでしまう。そんなふうに感じられた。
プライベートはともかく、公の場ではシャイでクールなイチローだから、「みんなのため」に熱いところを見せることができなかったのかもしれない。
ただ単に、若かったからかもしれない。
イチローとて、人の子、若いときは身勝手なものだ。

記憶に新しい世界大会、WBCで、我々はイチローがチームのため、いや日本のために熱くなっているところを初めて目にすることになる。
誰もがその変貌ぶりに驚かされた。
いい意味で、我々が持つイメージを裏切った。

2006年6月7日。イチローは32歳にして、日米通算2500本安打とい記録をつくってしまう。
こんなコメントを残した。
「野球界が前に進んでいくためには技術だけでなく、記録でも後輩が先輩を抜いていかないと進歩したことにはならないと思います」

イチローの口から「野球界が前に進む・・・」という言葉を聞くとは思わなかった。
『変わらなきゃ』ならないのは、イチローを見る我々の目のほうであったようだ。

by Cafe_Gimlet | 2006-06-09 20:40 | 揺さぶる言の葉


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