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しなやか通信

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2006年 10月 06日

ノーベル文学賞の行方

今年のノーベル文学賞を村上春樹氏が受賞するのではないかと、一部のマスコミで騒いでいますね。
デビュー時から村上春樹を読み続けてきた者としては、受賞されることは当然喜ばしいと思うのですが、マスコミの報道の仕方が、底が浅いと言うか、考えが足りないと言うか、とにかく白けてしまうのです。



受賞するのではないかという推測の根拠が、競馬の予想みたいなのです。
ここ2年ほど、フランツ・カフカ賞の受賞者がノーベル文学賞もあわせて受賞している。
今年のカフカ賞は村上春樹が受賞した。
だから、ノーベル賞も・・・
と、こういう論理なのです。
他の理由を挙げている媒体もあるのかもしれませんが、私が見ていた某局のニュース番組では、カフカ賞からノーベル賞へ、という話をしていました。
菊花賞の勝ち馬が年末の有馬記念でも好走する、という競馬の予想みたいで滑稽に感じます。
たかだか、同じ事象が2度続いただけで、じゃあその次も同じ結果になる、と騒ぎ立てるのは軽すぎはしませんか。

村上春樹の小説は翻訳されて、世界各国で広く読まれています。
日本のみならず、世界のいたるところで受け入れられているのは何故なのか。
デビュー当時は、『僕』という一人称主体で物を捉え、語られていた、ある種、私小説のような狭い世界観だったのが、少しずつスタイルが変化していく。
カルト集団の事件、その取材の後、小説に社会性が増すようになる。
最新作では、『僕』ではなく、『わたしたち』という人称で物語られている。
・・・村上春樹を読んでいれば当たり前に想像できうること。
それらに一切触れないで、競馬の予想みたいな論理だけで、ノーベル賞に期待がかかります、なんて言われても白けてしまうのです。

テレビのニュースなどは時間の制約があるから、そんなに深くは掘り下げられないのだよ。
そういう反論もあるでしょう。
それは真実でしょう。
しかし、時間の制約というニュース媒体の都合だけで、事情に詳しくない人間をミスリードするのは危険ではないかなと思うのです。
今回は文学賞のことであり、間違った方向に導かれても、一般市民の生活には直接的な影響はありません。
文学賞のこと以外でも、ミスリードしているようなことがありはしないか。
私は、そのような危惧を抱いています。

by Cafe_Gimlet | 2006-10-06 20:14 | 揺さぶる言の葉


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